小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

【日本の伝統芸能】舞と踊りの違いを芸大生が説明する

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舞と踊りの違いって、多分伝統芸能関係の人しか解らない事だと思うんですけど、実は舞と踊りでは芸態も歴史もかなり違ってくるんですね。

芸能に関する卒論を執筆する中で、私はどうもイラッとしてしまって、論文指導の担当教員を変えて貰ったのですが・・・

前の論文指導の担当教員が、「関西の湯立神楽(私の研究対象)は竈の前で踊るだけ(間違いです)で原型を留めていないし価値がない」って言ったんですよ。
そこで、間違った認識で価値がないって言っている事にもイラッとしたし、一貫して舞を踊りと言っていた事にもイラッとしました。

だって、舞と踊りはそもそも全然違う芸能だから・・・

卒論は大学入学前から7年間調べていた事の集大成でもあったので、指導教員なのに伝統芸能への理解がない事に凄くイラッとしてしまったんですね。
心が狭いからね。

そんな感じで、今日は日本の伝統芸能における舞と踊りの違いを書いてみます。

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舞と踊りの違いって?

舞と踊りはそもそも全然違う芸能です。
舞と踊りって具体的な名前で言ったら何なの?って感じだと思うんですけど、舞は舞楽の舞、踊りは盆踊りなんかが典型的だと思います。

舞と踊りの違いで調べてみると、舞は旋回を、踊りは跳躍を基礎とするって説明されてる事が多いですが、ちょっと雑なまとめ方だなと感じたりします。

旋回しない舞も結構あるし、稚児舞みたいに跳躍する舞もあります。
跳躍と旋回だけでは舞と踊りの区別は出来ないと思いますね。

跳躍する稚児舞
youtu.be

跳躍する舞と言えば、筑紫舞もありましたね!

これも不思議な舞で、現在の筑紫舞は一度絶えたので関西から逆輸入した舞みたいですが・・・
そのわりに昭和20~30年くらいの神道の資料で、九州の神社で行われる伝統的な神楽として筑紫舞(神舞・かんまい)が紹介されていたりします。謎。

近世っぽいって言う人がいるけど、音楽は編曲された物なので無視して舞だけを見ると、確かに近世っぽい所もあるけど、近世になってから成立した舞には見えない。
しかし、古代からある舞にも見えない。

所々に古い型が交じっている様に見えるので、中世~近世初期頃に成立した舞じゃないかと思います(個人的な意見です)けど、謎多き舞ですね。
結構好き。
https://youtu.be/lmjWQUDf-n8youtu.be

じゃあ舞踊りは何が違うの?って話ですが、芸態で言えば、踊りは多人数で行う輪踊りを基本としています。
古い踊りの様式を留めている物はって事ですよ。

そもそも、踊りの起源は空也さんの念仏踊りに求められたりしていて、庶民が行う参加型の芸能という性質もあるそうです。
盆踊りが典型です。

奈良県田原地区の盆踊りは祭文の影響もあったりする。
動画はおかげ踊り。
youtu.be

念仏踊り
youtu.be

踊りを行う場所も、特別な場所ではなくて庶民の生活空間である場合が多いです。
そして、踊りの担い手も庶民である事が多く、観覧者と踊りを行う人の区別が曖昧である場合が多い。

それに対して、舞というのは輪踊りではなく、少数の決まった人が、宮中や神社仏閣など特別な場所で行う芸能の事です。

大抵は舞を"献上"する(天皇、あるいは神仏に献上する)という意識が根底にあり、古くは舞を舞うことで天皇服従する意思を表す物でもありました。

皆で集まって、踊る人も観覧者も平等な状態で行う踊りとは少し違う意識があるんですね。

舞は献上する芸能ですから、舞を舞う人も特定の人物という事になります。
これは専業の芸能者って事ではなくて、観覧者も舞に参加できる様な様式ではないって意味です。

根本的に全然違う芸能なんですね。

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じゃあ舞踊ってなに?

舞と踊りの違いは解った、じゃあ舞踊って何なの、舞と踊りがくっついてるけど。
それに、踊りだけど輪踊りじゃないのって多いよね?って意見が聞こえて来そうです。

舞踊というのは難しい概念ですね。
元々は歌舞伎の舞踊を表すために作られた新語で、古い日本語ではありません。

歌舞伎以前の日本の芸能は、踊りと舞が入り交じった物はありますけど、一応の名目上は舞と踊りに区別されていたんです。

ところが、本来踊りであった歌舞伎が(歌舞伎の前身でもあるややこ踊りはやはり輪踊りです)芸能として成熟して行く過程で舞の要素を取り込み始めて、独自の様式を作ってしまったんですね。

舞でも踊りでもない歌舞伎を表現するために作られた言葉が"舞踊"です。

ですから、狭義の意味の舞踊とは、歌舞伎と歌舞伎から派生した日本舞踊のみを意味するのですが、広く芸能全般を意味する言葉としても知られています。

えっ!日本舞踊って歌舞伎に由来してるの?って思ったのは私だけじゃない筈・・・

まぁそんな感じで、日舞と良く似ている京都の舞妓さん、芸妓さんの舞なんかは、これは歌舞伎発祥ではなくて地唄から出てきた芸能なので舞踊とは言わず、京舞と呼びます。

京舞(京舞は舞だけど、催しの名前はをどりになる複雑さよ)
youtu.be

言葉の意味を知っていると、なるほどって感じですね。

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そんな感じで、舞と踊りは全然違うぜって話でした。

結構雑にまとめられる事が多いから、そんなに簡単なくくりじゃないよ!って意思表明したかっただけです。

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参考
値段が高いので図書館ででも読んでください。