小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

【介護日記②】末期癌患者の最後・転移から看取りまでの日々【在宅看護】

治るはずだった祖母の癌ですが、抗癌剤の投与後に転移が見付かり、介護をする猶予もなく旅立ってしまいました。

進行の早い悪性リンパ腫だった事もあり、本人の希望と緩和ケアの観点から、転移が解ってからは点滴を抜く事で自然と亡くなる方へ導いて行く方針となり、退院後5日でこの世を去りました。

それから一ヶ月以上経ち、落ち着いて来たので在宅看護について記事を書こうと思います。

転移の発見から退院まで

転移が見付かった時点で治療は不可能となったため、すぐに緩和ケアに切り替わる事になりました。

歩けていた祖母が歩けなくなり、抗癌剤の副作用と思っていた味覚異常が治らないなど転移の予兆はあったのですが、年齢や副作用と思い込んでいたため発見が遅れてしまいました。

発見が早くても治療は出来ないのですが、予後は良好と聞いていたのに…と裏切られた気持ちです。

転移が見付かってから2日目で退院し、本人の希望通り最後は自宅で迎える事となりました。

祖母を乗せた車と同時にエアマットや痰の吸引機、酸素の吸引機などを運んで貰い、曾祖母が使っていた介護ベッドを利用しての介護が始まりました。
エアマットなどは病院を通じて介護用品の会社からリースしていた様です。

初日は疲れで話もできず、帰宅後2~3日目が一番元気そうで長話もでき、食事も多少は取れる状態でした。
その後は徐々に体力を失っていった為、早めに話をしておいて良かったと思います。

訪問看護

訪問看護は一日一回のペースでした。
看護師さんも忙しく、診察後は他の患者さんの家を回っているため緊急時だからと言って病院の様にすぐに来てくれる訳ではありません。

息を引き取った場合も、物理的に看護師さんがすぐに来れない事もあるので、ある程度の覚悟は必要だと感じました。
(ちなみに電話にはすぐに出て貰えるので医療の知識は必要ないと思います。)

緊急時、息が止まった時などは耳元で呼び掛けて体をゆするだけで最初は戻ってきてくれます。
意識が戻ったら心拍数や酸素濃度も確認します。

最後には緊急事態を繰り返すことになるため、段々と冷静に対応できるようになると思います。

痛みのケア

最後を迎えようとしている場合、薬を口から飲むのは難しいため座薬を渡されます。

私たちが受け取った痛み止めは、痛みを和らげる代わりに意識が遠退く(意識が遠退く事で痛みを和らげているのか…)物だったため、祖母を診察していた医師の間でも使用頻度については意見が別れていました。

やはり痛みで唸ると言うか、その様な強い痛みが出る事があるので、その時は座薬を使いましたが、親戚や友人の訪問時に意識を保てるよう、苦しみが比較的軽そうな場合はあまり量を使わない方針で過ごしました。

4日目以降はあまり唸る事もなく、痛みを伝える力が無いのか、痛みが軽減しているのか解らなかったですが、日中に「痛くないの?」と聞くと頷いていたため薬はあまり使用しませんでした。

手を握っていると会話が出来なくても変化が解りやすくて良かったです。

薬を使わない場合は痛みのある箇所を手で擦るのが良いと言われています。
祖母は退院時に自ら痛い部分(左後ろの首筋など意外な場所でした)を教えてくれたので助かりましたが、特に何も聞いていない場合は介護する側から事前に質問した方が良いだろうと思います。

食事と水

末期癌の場合、食事は殆ど取れないと思いますが嗅覚は最後まで残るそうです。
医師から食事を口に入れてあげるだけでも食べた感覚があると教わりました。

水よりも、とろみのあるゼリーや葛の様な物の方が誤飲を防げるらしく、祖母は嫌がっていましたが、水分補給にもとろみのある物(病院から貰いました)が使われます。
祖母の場合、食事はゼリーやうどんや蕎麦の汁などを口にしていました。
本人はビスケットやカステラを欲しがっていましたが…

体力が無くなるほど口呼吸になりますから、口が乾燥しやすくなります。
最後は本人が水を欲しがっても飲めない状況になりますが、食べ物と同じで口を濡らしてやると少しは渇きが収まる様です。

根気強く徐々に口元を濡らす事で水を欲しがる状態も落ち着いて来ると思います。
嘘か本当か解りませんが、点滴よりも口を濡らす方が渇きが収まるという話もあるので、感傷的にならず徐々に口に入れてやると本人も納得している様子でした。

脱水症状

最後を迎えるにあたって点滴を抜く場合、必ず脱水症状が現れます。

体内の温度を調節できなくなる様なので、本人の意思を尊重しつつ布団の枚数やエアコンの温度を調節しましょう。

冬場だったので、なるべく毛布を着せていたのですが、脱水症状がある場合の体感温度は健康な人の体感温度と異なる様なので良くなかったかな…と反省しています。

脱水症状が出始める頃には体力も落ちているので会話の回数も減り、本人の意思を尊重しづらくなっています。
体感温度の確認を取りづらいので、定期的に空気の入れ換えをするなどして様子を見るのが良さそうでした。

脱水が進むにつれ体温の調節が出来なくなり、微熱が出るようになります。
やがて尿の回数が減り、そのまま最後を迎える事になるため、体調の変化には注意しましょう。

痰の吸引

脱水症状に伴って、痰の吸引が必要になります。
放置すると痰で喉がふさがり息が止まる事もあるので、ゴロゴロしている段階で思い切って吸引した方が良いです。

吸引方法は脱水症状が出る前に看護師さんに教えて貰っておく方が良いと思います。
私たちが教わったのは鼻から管を入れて吸引する方法で、口から入れるよりも不快感が少ない様です。

やり方としては、鼻から管を通し、鼻の奥の壁に当たった所で手元の管を上に引き上げて管の先を下降させ、喉元まで持っていく方法です。

ただし、何度も吸引すると粘膜が傷付くため、口元まで痰が出ている時はスポンジを使うのですが、放置すると呼吸が弱くなるので判断が難しいです。

粘膜の荒れは、オリーブオイルを綿棒で付けてやるだけでも随分違うそうなので時々塗ってあげるのが良いと思います。

死の予兆

最後の時までの時間や、緊急時の対応を見誤らないよう、事前に死の前兆を調べて注意しながら過ごしました。
事前に調べた中で祖母に当てはまったのは、呼吸時に喘音がする、尿が無くなるなどの症状でした。

尿は脱水症状の一環で、水が無いため出なくなるという理論で、看護師さんからも聞いていました。
呼吸時の喘音は亡くなる三日ほど前から鳴り始め、数日で収まっていたため危機は乗り越えたのかと思っていましたが、そうでは無かった様です。

一般的に、亡くなる際は昏睡状態となり眠るばかりで意識が戻らないまま逝く…など聞きます。
祖母も眠る時間が増えましたが、最後の最後に目を開けて呼び掛けに頷いていたため油断したのが運の尽きで、その一時間後に亡くなってしまいました。

癌の症状についてもそうですが、世間一般で良く聞く話も100%では無いので信じるものでは無いですね…

意思の疎通ができると思って安心し、好物の黒糖の入った黒蜜を口に入れてやれなかったのを後悔しています。
本人が元気そうにしていても善は急いだ方が良いですね。

在宅看護にして良かったか

やはり病院で亡くなるより良かったのではないかと思います。
また、今はコロナで面会も出来ない状況で親戚が祖母に面会できたのも良かったと思います。

ただ、家族の負担は大きいです。
私たちは田舎で親戚も多いため交代で介助できましたが、核家族のような形だと難しいのでは…?とも思いました。

介助は夜もあるため、我が家の場合は実感として少なくとも3~4人は必要だったと思います。
仕事の都合もあるため、周囲の協力は不可欠です。

また、家で看取ると言えば聞こえは良いですが、医療の知識のない一般人が緊急時の対応をする訳ですから、もしも失敗したら…という不安もありました。

もちろん緊急時は看護師さんと電話でやり取りをするので、一人で何も解らないまま対応…という事はないですが、心理的な負担を軽減するためにも複数人で交代しながら情報を共有しつつ介護するのが理想的だなと思いました。

仕事との両立なども大きな課題になって来ますから、もう少し時間に余裕があれば癌患者の会などにも参加したかったです。

癌は症状も様々です。
祖母の場合は悪性リンパ腫という特殊な癌だったためか、老人の癌は進行が遅い、余命が解るなど、良く聞く話は全くあてになりませんでした。

祖母は特に容態の変化が激しく、それに翻弄される日々でしたが、本人の希望通り自宅で家族に囲まれて最後を迎える事ができて良かったと思います。

今後、誰かの役に立つかもしれないので体験を記事にして残したいと思います。