僧舞は韓国を代表する伝統舞踊の一つです。
が、初めて僧舞を見た時から、私はあの頭巾は一体何を意味しているのかが気になり、長らくその謎が解けないままでした。
が!
卒論の関係で「中国雲南西北部少数民族の宗教儀礼」という、みんぱくが製作しているビデオだったかDVDだったかを見て、ようやくその謎が解けた様に思います。
今日はそんな楽しい話をしようと思います。
「中国雲南西部少数民族の宗教儀礼」の説明
「中国雲南西北部少数民族の宗教儀礼」は、恐らく古い上にマニアックなので一般にはあまり出回っていないDVD(VHSじゃ無かったと思う)ですが、私は県立図書館で発見して視聴しました。
市立・町立図書館には無い事が多いと思いますが、インターネットでも検索できるので、興味のある方は検索してみて下さい。
このDVDは二部構成になっているのですが、第二部の「ぺー族の葬送儀礼」に収録されている儀礼に、韓国の舞踊に共通する様な文化的な風習が収録されています。
ペー族の文化は、漢民族の文化から強い影響を受けている様ですが独自の部分もあります。
現在の私の知識では、漢民族の影響を受けた文化とペー族の文化を完全に区分して理解する事が出来ず、その部分だけが心残りとなっています・・・
僧舞の頭巾に良く似ている・・・
では本題。
実はこのペー族の葬送儀礼の中では、棺を家から墓地に運ぶまでの間に亡くなった方に近い血縁を持つ女性達が僧舞の頭巾に良く似た頭巾を被っています。
あっ!同じ頭巾で、しかも女性だ!という訳です。
僧舞は恨を解くための舞踊だと聞いています。
そして、韓国で言う所の恨とは、日本で言う所の穢れと少々似ています。
知らず知らずの内に抱え込んでしまう、諸々の念と言うか、煩悩と言うか、人の魂をこの世に留めさせるような、そういう何かを恨と言います。
恨は、特に女性が持つ物だとされています。
こうして書くと男尊女卑の様ですが 笑
どうも恨というのは家族への心配だとか、そういう物らしいです。
ペー族の頭巾をかぶった女性達は、棺にすがりついて大声で泣くのが本来あるべき儀礼の姿とされています。
古代の朝鮮半島や日本でも行われていた、泣き女の風習ですね。
棺にすがりついて泣く彼女達と、恨を解く為に舞う僧舞の姿が私の中で重なりあい、僧舞が表現しようとくる物が見えた様な気がした瞬間でした。
韓国の死銭は子孫銭?
実は、更に韓国の舞踊と共通している点もありました。
"子孫銭"です。
韓国の宗教舞踊では、巫女(巫堂だったか、巫俗だったかを忘れてしまった!)が日本の神道の大麻(神社で見掛ける、白いギザギザの紙が集まった物)の様な物を持って舞う事があります。
韓国では、それを"死銭"と呼んでいるのですが、死銭とは死者が冥界で利用する為のお金です。
葬送儀礼で、死銭と呼ばれるお金に似せた紙を燃やす文化は中国文化圏で盛んに行われていて、実は日本の沖縄にも同様の文化があります。
が、白いギザギザの紙が集まった物が、冥界で利用するお金とはどういう事なのか??
あまりにも形状が違い、この事も長らく不思議に思っていましたが、なるほど、子孫銭という物が中国にもあったという訳です。
舞踊を学ぶ中で思う事
そんな訳で、色々と述べて来ました。
伝統舞踊は年代が曖昧になっている物や、時代によって変化している物が多く、研究が難しい場合が多いです。
これまで述べてきた事も、学術的に証明するのであれば年表を作り、史料から根拠を見付け出さなくてはなりません。
言語の壁がありますが、余裕があればいつか研究したいテーマではあります。
所で、良く宗教関係者から何があなたにそこまでの事をさせるのか、と言われる事があります。
たぶん、私は調べすぎだからそういう事を言われるのだと思います。
でも、舞踊が好きで巫女になったのに、それを学び続ける事の何が不思議なのか、私には良く解りません。
何故私は神楽と、東アジアの宗教舞踊をこれほど調べるのでしょうか。
中国語を学べば、(日本よりも伝統舞踊に関する研究が進んでいる)中国の文献や、日本・韓国の漢文を読める様になるかも知れないと思って、中国語まで勉強しました。
そして、舞踊学を学ぶ為に留学したいと思っています。
なぜそんな風に思うのか、私にも良く解りません。
私は舞踊の意義を解明したいと思っています。
ただ、舞踊を学ぶ時が人生の中で何よりも楽しいです。
では!