小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

日本雅楽と中国雅楽ー礼楽・韶楽の世界

個人的な趣味で、二年ほど雅楽の横笛教室に通っていたりします。
そこで、日本と中国の"雅楽"がどのように違うのかについて記事を書いてみたいと思います。

雅楽について

雅楽と言えば世界最古のオーケストラ。
日本の古典音楽の基礎にもなっている、なんだか大層な古典音楽です。
日本の雅楽は大きく「唐楽」と「高麗楽」に分類され、300曲程度の楽曲が現在に伝わっています。

雅楽を鑑賞される方は比較的少数だと思います。
そして、地域的にも盛んな場所とそうでない場所があります。

もしも雅楽を聞いてみたいという気持ちを持って頂いたなら、各地の寺院や神社の祭礼に行けば見る事が出来るかも知れません。

歴史と格式のあるある音楽ですが、日常とかけ離れた、別世界の音楽ではありません。

演奏会もありますが、寺院や神社の祭礼の方が気楽に鑑賞できるかな、と思います。

さて、そんな雅楽ですが、日本の雅楽関係者や日本の音楽教育の関係者の中には「中国では絶えた」或いは、「現在は日本だけが継承している」音楽だと仰る方がいます。

ある意味ではそれも正しい認識ですし、それを批判する記事では無いのですが、今日は日本の雅楽と中国雅楽の関係について書いてみたいと思います。

正楽の認識

日本の正楽=雅楽と俗楽の違いは何か?という問に答えを出そうとすると、なかなか難しいです。

なぜなら、日本の雅楽は仏教等の宗教とも古くから関わりがありますし、朝廷との関わりも強いからです。

宗教や儀礼の場で演奏するから正楽なのだと捉える事もできますし、朝廷で演奏する、宮廷音楽だからこそ正楽なのだと捉える事もできます。

ただ、ここで無理に強調して言えば、日本の雅楽とはイコールで日本の宮廷音楽の事で、音楽の正俗は演奏者や演奏する場所の位で決まると言えない事も無いと思うのです。

例えば、日本の雅楽では宗教とも正式な儀礼とも関わりの無い、饗宴で演奏される音楽や歌謡曲などが雅楽=正楽として分類されています。

これは、楽曲そのものよりも、演奏者や演奏される場所を考慮した上で分類されているからでは無いでしょうか。

これに対して、中国の場合正俗の分類は非常に明確です。
儒教儀礼に用いる音楽、あるいは儒教の宗教音楽がイコールで正楽として認識されます。
この為、俗楽としての宮廷音楽が存在しています。

そして、ややこしい事に、この俗楽=儒教儀礼とは関わりの無い音楽としての宮廷音楽の系統を引く、日本の雅楽が存在しています。

この事からしばしば、日本の雅楽は中国の庶民の音楽だと主張される方が居ますが、先程も説明した様に、中国の俗楽とは位が低い庶民の音楽という意味ではありません。

中国の俗楽とは人間の為に演奏される音楽という意味なのです。
では中国の正楽=雅楽とはどの様な音楽なのでしょうか?

中国の雅楽

「楽理」という言葉は日本では殆どが西洋音楽音楽理論、という意味で使われている様に思います。

世界には様々な音楽理論があり、特に楽理が発達している国はギリシャ、インド、中国だと言われています。

あまり知られていませんが、世界で初めて十二平均律を算出したのも中国人です。
中国の音楽理論は、中国哲学と結びついた非常に難解な理論です。

特定の音と暦を関連付けて、転調しながら演奏する事で季節の移り変わり=道(タオ)を表現したり、音を用いて八卦を表す等、音楽の知識だけでは到底理解できる物ではありません。

これもまた日本ではあまり知られていませんが、中国の儒教では天や孔子を祀る儀礼がありますから、それ自体がひとつの宗教の様な物でもあります。

儒教は天子が祭典や儀礼(礼)を行う事で国家を治めるという、ある意味では神道にも近いイデオロギーを持った哲学と宗教の中間の様な物なのです。

儒教との関連が主張される事はありませんが、日本の宮中や神社に伝わる御神楽の中にも、冬至の日に天を祀る等、儒教との関係を思わせる部分があります。

儒教を宗教だと言うと、違和感を覚える方もいると思いますが、少なくとも東アジア一帯での儒教は、宗教味を帯びた学問である事は間違いないでしょう。

儒教儀礼の中で演奏される音楽は、この様な中国の音楽理論や、韶楽を元にした音楽です。

これらの音楽は韶楽や礼楽とも呼ばれており、儒教が盛んであった江戸時代に、日本でも演奏されたという記録があります。

文化大革命の後、中国国内での雅楽は一度廃れているのですが、現在も台湾や韓国に儒教の宗教音楽としての雅楽が伝わっています。

中国国内でも雅楽を見直す動きがある様で、北京では韶楽を鑑賞する事ができます。

日本の雅楽と中国の雅楽は全くの別物ですが、長い歴史の中で両者は関わり合い、議論の主題とされて来ました。

現在では日本の音楽として、本来は外来音楽である筈の「雅楽」が取り上げられる事が多いです。
しかし、もう少し広い視野を持つ事で、より広い意味でこの音楽が理解できるのでは無いかと私は考えています。


韶楽
youtu.be

中国雅楽
youtu.be



雅楽関連のお勧め

韓国(当時はまだ朝鮮)の礼楽について少し出てきます。




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