小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

【逃亡犯条例改正・デモ】今香港で何が起きているのか解りやすくまとめてみた

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中国人の友人とメッセージのやり取りをしていて、香港の問題に対するイメージが全然違うなぁと思ったので、ブログにしてみようと思います。

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香港の歴史

まず始めに、そもそも香港の制度について良く知らない人も多いと思うので、さらっと書いておきます。

中国には北京政府とは異なる政府がいくつかあり、自治が認められている地域が複数あります。
香港はそんな中国の自治区の中の一つです。

自治区では無い一般的な中国人が香港に行く際はパスポートが必要ですし、政治や法律が異なります。
香港では、このシステムを一国二制度と読んでいます。

歴史的には1842年~1941年迄、香港はイギリスの植民地となっていました。
その後、1941年~1945年は日本統治時代に入りますが、日本の敗戦によって1945年~1997年迄、再びイギリスの植民地となった後、中国に返還されています。

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逃亡犯条例

デモの切っ掛けとなったのは、逃亡犯条例の改正です。

これまでの法律では、中国大陸、マカオ、台湾(中華民国)の各地域間では、刑事事件の容疑者の引き渡しが出来ない事になっていました。

しかし、香港人カップルが台湾旅行中に争いとなり、男性が女性を殺害する事件がおきました。

犯人は逮捕されないまま香港へ戻り、後に香港警察の取り調べにより罪を自白しますが、香港から台湾に犯人を移動させる事ができず、香港国内では台湾で罪人となった人を裁けない事が問題となりました。

2018年時点の逃亡犯条例と刑事相互法的援助条例では、香港と「中華人民共和国のその他の部分」の間の犯罪人引渡しと相互法的援助ができない事になっていた事が切っ掛けで逃亡犯条例の改正へと進み始めた様です。

なお、台湾は独立国家であるのか、中国という国の一部地域なのか、国際的にもハッキリしない国の一つですが、中国では台湾を中国の一部地域として認識しているため、中国の法律では台湾は中国の一部地域として扱われます。

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逃亡犯条例の改正

逃亡犯条例が改正されると、香港行政長官は事例毎に引き渡し要請を受け付ける事になり、中国大陸などから要請を受けて資産凍結や差押を行うこともできる様になります。

香港の世論は当初より反対寄りで、複数の団体が中国大陸への引き渡しを盛り込む改正案への反対を表明しており、2019年6月9日に行われた3度目の反対デモでは人口の約7分の1にあたる103万人が参加しています。

香港政府は2019年6月21日夜に声明を発表、9月4日には逃亡犯条例改正の撤回を正式決定し、10月23日に撤回していますが、その辺りでデモは「五大要求」の達成を要求する政治的な物へと変化します。

五大要求とは、逃亡犯条例改正案の完全撤回、普通選挙の実現、独立調査委員会の設置、逮捕されたデモ参加者の逮捕取り下げ、民主化デモを暴亂とした認定の取り消し、以上の五つの要求の事です。


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主な事件

6月12日、夏慤道と竜和道を占拠しようとしていた市民が、警察側からの妨害を受ける。
20人以上が負傷し、多くが頭を撃たれる。
少なくとも11人が逮捕され、病院にも警察が派遣される。

10月1日の国慶節に香港全土で行われた抗議活動によって、政府関連施設、香港MTR、商業施設が多数破壊された。
この時に、警察はデモ隊に向かって初めて実弾を発射しており、被弾した高校生が重体となる。

10月4日、香港政府はデモ隊のマスクや覆面の着用を禁止する「覆面禁止法」の制定を発表し、5日に施行。

11月4日、香港科技大学の男子大学生が、立体駐車場の敷地内で意識不明で倒れていたところを発見され、11月8日に死亡が確認される。

11月11日、8日に死亡した大学生に対する抗議活動が行われ、デモ参加者に向けて続けざまに実弾を3発が発砲される。

11月12日、香港中文大学構内に警察が強行突入し、催涙弾や放水車を使い学生を多数拘束。

11月18日、香港高等法院は「覆面禁止法」が香港基本法に違反するとの判決を下すが、香港政府は上訴する。

12月8日、デモ隊は、すでに達成された「逃亡犯条例改正案の完全撤回」を除く残り4つの要求を主張するデモを改めて行った。

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中国人はデモをどう思っているのか

まぁ、普通にデモ隊を支持する人は殆ど居ないですが、珍しい話が聞けました。

曰く、"香港で実弾が発砲されたニュースは聞いているけど、実弾を受けて死亡した香港人は起き上がって警察から逃げようとしているビデオがある。
中国以外の報道機関はデモ隊が演技している部分だけを取り出して報道している。"と。

ビデオも送られて来たので、ちょっとどうなっているのか良く解りませんでしたが、このブログを書くために色々と読んでいて納得。

11月11日の抗議活動でのビデオだった様です。
この時に実弾を受けたデモ参加者が二名倒れ、警察が取り押さえようとした時点で一人が起き上がって逃げようとした、との事。

死亡者は出ているものの、実弾を受けたデモ参加者の多くは"重症"との事なので、実弾を受けた=死んだ訳ではない。

死んだふりではなく、実弾を受けて倒れたが意識があり、警察から逃げようとした場面のビデオが、中国では香港人の演技として報道されている様です。

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香港警察と中国政府

テレビなどで報道される香港のニュースからは、香港VS中国共産党の戦いという印象を受けます。

そして、デモ隊を妨害する香港警察=中国共産党と癒着している、という認識はけっこうある・・・というのが私の所感ですが、どうでしょうか。

私は香港警察関係者では無いので、実際の所は解りませんが、6月12日の時点でデモ隊への過剰な実力行使を主導したのは、警察のイギリス人上級幹部・パート・ドーバー警視らだった事がニューズウィークで報道されています。

この件がイギリス人上級幹部による独断だったのか、買収されていたのかは解りませんが、ちょっと話が変わって来る気がします。

なお、中国本土では、今回の一件で政府は香港警察を支持する様になったと認識されています(中国人の友人談)。

ただし、現在の香港では中国でも多発する不審死が相次いでいるものの、警察は全て自殺として処理している等の情報あり、香港警察の実態は解りかねます。

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デモ隊による商業施設の破壊

実は香港では、デモを良く思っていない人達もいて、例えばサービス業関連者などはデモに反対している人も多い、というのが一般的な認識の様です。

お店にお客さんを集めてお金を稼がないと、経営者は生活が苦しいですから、(共産党との繋がりがあるお店もあるとの噂もありますが)背に腹を変えられない事情も多分にあると思います。

そんな状況下で、当初は合法だったデモ隊の活動は、警察による攻撃を受け、その不当性を問い掛けるために商業施設や駅に監視カメラの映像等の提供を求めた所、上記の事情からそれを拒否された等の事情から徐々に店舗の破壊などの違法行為へと繋がっていった様です。

数日前に、デモ参加者が警察を乗り越えて商業施設の二階から転落する事件がありました。

この事件も、商業施設とデモ隊の対立から生まれた事件だと言えます。

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デモ隊の暴徒化

11月11日に、デモ隊を撮影していた50代の日本人男性が、デモ参加者から暴行を受ける事件がありました。

現地のデモを撮影しているYouTubeの映像(報道機関による物ではない)を見ていても、やはり共産党や警察に関連すると思われる人物は暴行を受ける事があるという話が出てきます。

暴行は合法的なデモには必要ない物ですから、駅や商業施設の破壊と共に暴徒化の一つとして捉えられるでしょう。

私はダライ・ラマの自伝を読んだ事があるのですが、そこには中国共産党の介入から次第に抗議活動が激化して、民衆が暴徒化してゆく様が書かれていました。

正直私は香港について詳しい訳ではないので、今の香港の政治的な環境がどの様な物なのか、一般に言われている様な事しか解りませんが、この自伝の記述を思い出しました。

そこに関連があるのかどうかは私には解りません。
一日でも早く、香港に平和が戻る事を祈ります。

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