少し前に、世界各地の神話を広く浅く学ぶ機会がありました。
そこで、久々に中国神話の盤古のお話を耳にして、やっぱり目から月神・太陽神が産まれるんだなぁと思って感慨深かったので、そんな話をしようと思います。
古事記ー三貴子の誕生
みなさま、古事記はもう既にお読みでしょうか。
まぁ、読んでる人も読んでない人も居るでしょう。
読んでいない人にはこうの史代の『ぼおるぺん古事記』を読むと原文の感じが軽く読めるのでオススメですが、まぁそれはどうでも良くて。
月神・太陽神の誕生に纏わる神話ですね。
日本神話では、月神の名前を月読尊、太陽神の名前を天照大御神と読んでいます。
この二柱の神様は、初めて男女の性別を持ったイザナキ尊・イザナミ尊が黄泉の国で離別し、再び葦原の中津国(この世)へ戻ったイザナキ尊が水に浸かり、黄泉の国の穢れを祓う場面で誕生します。
右目を洗った際に産まれたのが月読尊、左目を洗った際に産まれたのが天照大御神尊。
そして、鼻を洗った際に産まれたのが素戔男尊です。
盤古の神話
では、中国神話ではどうでしょうか?
中国神話における月神・太陽神の誕生は、天地開闢の創世神である盤古(ばんこ)という神様の死から始まります。
中国神話では、盤古の死語、その体から万物が生成されたと伝えられています。
ちょっと文献がないのでWikipedia参照です。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%A4%E5%8F%A4
このとき、日本神話と同様に右目から月が、左目から太陽が生成されます。
なんという事でしょう、神話の内容が丸かぶりです。
しかし、私達には忘れてはならない部分があります。
そう、鼻。我が愛すべき御祭神・鼻から生まれた素戔男尊はどこへ行ったのか?
中国神話では、盤古の鼻からは何も産まれていないのです。
神話の共通点
さて、盤古の神話と、三貴子の誕生に共通する部分を挙げてみましょう。
まず始めに、神様が死んでから他の神様が産まれている所。
日本神話では死んでないって?
でも、黄泉の国から帰還したという事は、そういう事です。
更に、右目から月神が、左目から太陽神が産まれる所も同じです。
陰陽道で言えば左は上位になりますから、やはり生物を生育する太陽は左になるのでしょうか。
天照大御神には農耕神としての一面もあります。
目は二つあるので、陰陽を象徴する意味でも、そこから神が産まれるというのは納得できる所ではあります。
では、その中間にある鼻とは何なのか・・・?
素戔男尊は何者なのか
実は、日本神話には中国神話から拝借してきたのかな・・・という記述がボチボチ含まれていて、三貴子の誕生と盤古の神話の部分だけが似ている!という訳ではありません。
そもそも、天地開闢の時点で『古事記』は陰陽という言葉を使っており、日本神話の成立に中国思想の影響があるのは学者も認める所ではあります。
神道の儀礼の中にも道教・儒教由来の所作が認められますし、中国思想と神道に深い関わりがあるのは間違いないでしょう。
そんな神道の根幹となる日本神話に記される素戔男尊は、"出雲神話"の主役でありながら、出雲国風土記にはほとんど記載がなく、そうかと思えば各地に素戔男尊に纏わる伝承があるという不思議な神様です。
神仏習合においては牛頭天王とされ、海外の神話との関連を指摘する書籍こそ多いものの、結局その実態は良くわからないと言わざるを得ません。
この神様は一体どのような神様なのか。
以前と比べたら、随分中国文化への理解は深まっているのですが、この神様の性格を真に理解しようとするなら、やはり相当の知識が必要です。
勉強を続けて、いつか真相が解るようになりたい物です。
※なお、私が読んできた文献の中に、素戔男尊は荒ぶる神=顕ふる神だとする解釈がありましたが、個人的にはそれが一番好きです。