小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

済州島神話に思うことー神話の解釈とバイアス

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済州島神話を学ぶ

少し前に大学のスクーリングで済州島の神話の大まかなストーリーを聞きました。
簡単な概要はこんな感じ。

人が住んでいなかった済州島に、土から三人の男性が生まれた。
高氏、梁氏、夫氏の三人の男性は、日本から来た船に乗っていた3人の女性と結婚した。
船には日本の使者と、穀物、家畜が乗っていたので、三人は農耕、牧畜を始め、人間世界を作り出した。

という物で、なんだか凄く違和感を感じたので強く印象に残っています。

韓国というか、北を含めた朝鮮半島全域は比較的日本に近く、古くから難破船が流れ着く等の予期せぬ交流は多かった様です。

今も北朝鮮に限定すれば、難破船がたどり着く事がありますね、海岸でハングルが書かれた不審な船を発見したが、北朝鮮からの難破船じゃないか云々というニュースを時々耳にします。

流石に韓国船はGPSなんかが搭載されているので、難破して日本に流れ着く事はない様ですが。

その時は、現実でもあり得る船が流れ着くというリアルさと、お膳立てされたストーリーのミスマッチが、特有の違和感の正体なのだと思っていました。

が、しかし。
済州島の神話はそれだけでは無かったのです。


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翻訳によって印象が異なる

ここでも書いてますが、卒論の関係でアジアの宗教舞踊を調べている関係で色々な本を読んでいるのですが、その本にも済州島神話の概要が日本語で書かれていました。
内容はこんな感じ。

人が住んでいなかった済州島に、土から三人の男性が生まれた。
それを知った日本から、使者を乗せた船が来た。
三人は船に乗っていた姫と結婚し、農耕、牧畜を始めて人間世界を作り出した。

なんだか全然印象が違います。
少なくとも私はそう感じました。

最初の翻訳では、日本人が"マレビト"として書かれているのでは?という印象を受けましたが、二つ目の翻訳では政治的な意図を強く感じます。

良く読むと、それぞれの翻訳は大差のない物ですが、受けとる側の印象は大きく変わります。
他の人はそうでもないかも知れませんが、私は全く異なる印象を受けました。

ほんの少しの表現の差異でここまで印象が変わるのは面白いなぁと思って記事にしてみました。


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神話の解釈とバイアス

最近『神道史概説』から、日本には恐らく文字のない状態から漢字が入ってきた事で、外来文化を消化する形で文字を取り込んだという話を読みました。

確かにその通りで、文字の意味を理解した上で日本語に取り込まれた=日本文化が外来の文字に合わせて解釈される様になった訳です。

目前に何らかの事象がある時、人は自分の知っている物にそれを結びつけようとします。

これは外国人と話をしていてかなり強く感じる事でもある。
教育は人の人格を形成すると言っても過言ではない、と言うと話がそれますが・・・

私は始めの翻訳から、日本人の登場はマレビトの象徴だろうと予測し、二つ目の翻訳から日本人の登場は政治的な意図を象徴していると考えました。

しかし、本来の事象はマレビトでも政治的意図でもなく、ただ日本から使者と女性、それから穀物が運ばれたという伝承でしか無いのです。

そこに意味を求めるのは、私が日本神話の解釈を学んだからに他なりません。
しかし、それは同時に日本神話の解釈という、一面的な考えでしかありません。

そういう事を思いました。

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