小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

【傷痍軍人・戦傷者】戦後奈良の神社と退役軍人

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久々にお婆ちゃんから聞いた戦後の話でもしてみようかと思います。

戦後の神社についての話なんですが、最近ちょっと用事のついでに奈良県大神神社に参拝して、色々と思い出したので記事にしようと思います。
こういうのってあんまり記録されないですしね。

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失踪したおじさん

我が家のお隣さんの家には、昔(戦時中)身体障害者のおじさんがいたそうです。
確か手が不自由だったか何かで、重度と言う程ではないけど多少の手助けが必要な感じの身体障害だったそうです。

前にも話しましたが(※1)戦時中の農家って比較的裕福で、農作物を栽培している訳ですから食べ物に困る事は無かったらしく、お隣さん家のおじさんも特に問題なく、家族の助けを受けながら普通に過ごしていたそうです。

が、そんな中、終戦の日がやって来ます。
日本は敗戦し、社会は困窮を極めました。
お隣さん家のおじさんは手が不自由なだけで、自分である程度は生活できましたから、大変な時期に家族に迷惑を掛けている事を気にして自ら失踪してしまいます。

自宅から消えたおじさんを家族や村の人達は手を尽くして探しましたが、社会も混乱している時期で、おじさんは見つかりませんでした。

村の農家全員がおじさんの失踪を気にしながら数年(確か7年だったかな)経った頃、村の人から「大神神社でよぉ似た人を見た」との話が出て、家族で神社を尋ねたところ、まさに大神神社の参道でおじさんが見付かったと言う衝撃の実話。

※1
xiaoshizidewei.hatenablog.com


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戦後の神社と戦傷者

なんでおじさんは大神神社の参道にいたのかと言うと、実は戦後間もない頃の神社の参道には、おじさんの様な障碍者や戦争で負傷した傷痍軍人・戦傷者が集まって物乞いをしていたそうです。

なぜ神社なのかと言うと、人が集まる場所で物乞いをしても蔑ろにされず、神前なのでお金が貰える確率が高いからだそうです。
なるほど・・・
おじさんが発見された時も、手足の無い軍人さんと一緒になって参道に並び、物乞いをしていたそうです。

戦後の貧しい世の中で、物乞いだけでご飯が食べれたのかは謎ですが、同じ様な境遇の人達と助け合って生きていたそうです。

調べてみると、第一次世界大戦については日本は勝利したので保証もあったみたいですが、第二次世界大戦に関しては、日本は敗北しお金も無かったので戦傷者の手当ても出せない様な状況だったみたいです。

そうして住む家も失い、仕事もできない境遇の人達が物乞いとなり、やがて神社に集まる流れがあった様です。

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お婆ちゃんの昔ばなし

おじさんはその後、亡くなるまで自宅で過ごしました。
傷痍軍人・戦傷者の人達も、やがて保証が整いお金を受給できるようになったそうです。

戦後の神社というのはGHQの配下にあったらしく、お神楽や祭典など色々な行事が厳しく管理(基本的には禁止)されていた様ですが、お婆ちゃんの昔ばなしを聞くと、それでも参拝者は絶えなかった様ですね。

少し前に大神神社に参拝し、参道を歩いていてこの話を思い出しました。
大神神社大国主(別名・大物主)命で、出雲大社と同じの縁結びの神様ですから、家族の再会にはご神徳もあったのかも知れません。知らんけど。

おじさんの生活はどう考えても厳しいですが、悪くなかったみたいです。
人の多いポイントを複数ピックアップして、手分けして複数箇所で一日中物乞いをすると大抵は誰かが何かを貰えるので、それを仲間で分けていたそうな。

最後に家族が迎えに来た時、おじさんは自分が家に帰ると物乞いをする人数が減って困るだろうと思って、仲間が集まった時に相談したらしいのですが、「家があるなら帰った方が良い」というので快く送り出してくれたそうです。

考えてみると、戦後の話ですから障碍者学級もデイサービスも無い時代で、健常者に囲まれて自分を「迷惑な存在」だと思い込んでいたおじさんが、境遇は違えど同じく手足の無い軍人さんと助け合って生活した経験は、もしかしたら初めて自分の障碍が理解されたと感じた経験だったのかもしれません。

こういう話はあまり記録されず、思い出話程度に語られる物だと思うんですけど、リアルなのでブログにしてみました。
今もコロナで大変ですけど、昔は昔で大変そうですね。

また曾祖父の陸軍樺太基地での与太話とか書けたら良いなぁ~と思っているので、興味のある人は気長にお待ち下さい。

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