小獅子の尾

芸術大学の通信教育部に通う20代女子の雑記

失われる伝統文化と現代の伝統的ポップカルチャー


伝統文化を守ろう!という声を良く聞きます。
しかし、伝統文化とは一体いつの文化を指すのでしょうか

伝統文化とは?

例えば、衣服ひとつにしたって、女学生の袴姿は明治以降の風習ですし、おはしょりを作る現代の着付けも文明開化以降の文化です。

更に言えば、伝統的な衣装とは何時代の服なのか?という問いも生まれます。

現代の着物は明治前後の物が基本になっている様ですが、着物には小袖(現代の着物)もあれば大袖(狩衣等の古い着物)もあります。

京都では平安装束の着付け体験や、祭礼の際に平安装束を着た方々の時代行列がありますが、奈良では天平衣装の着付け体験や天平衣装での時代行列があります。

どちらが伝統的な衣服なのでしょうか・・・
答えはありません。
なぜなら、文化は常に変わって行く物だからです。

この意味で、伝統文化の継承はとても難しい物だと言えます。

時代の流れと共に自然な変化を受け入れる事と、伝統的価値観を残して行く事の違いをどの様に意識して行くのかは大きな問題です。

その一方で、神前結婚式や除夜の鐘、おはしょりを作る着物の着付け等、時代の流れを受けて、新たに産み出される伝統的な文化もあります。

伝統的ポップカルチャー

意外に思われるかもしれませんが、若者が作り出すポップカルチャーの中にも伝統的な価値観が根付いています。

例えば、日本を代表するポップカルチャーのひとつに漫画・コミックがあります。
漫画のイラストを見たことが無い方は、現代の日本には殆ど居ないでしょう。

漫画の登場人物は特異な外見をしていますね。
大きな頭に、一見同じ様に描かれる顔の造形・・・

これらは東洋の伝統的な絵画の技法と一致しています。

頭部を大きく描く絵画の手法は古代中国の物ですし、意図的に顔を描き分けない"引目鈎鼻"の技法は平安時代大和絵の技法です。

登場人物の台詞を表す"吹き出し"は、浮世絵や、浮世絵の絵師が描いた絵日記の中で服数回使用されている事が確認できます。

この様に考えると漫画・コミックとは非常に伝統的な意図を持った分野に見えます。

しかし、漫画家の多くはこれらの伝統的な絵画の技法を意識してイラストを描いている訳では無い所に、"文化"の持つ影響力の強さが感じられます。

日本の伝統芸能には、古くから少女や少年が行う物があるのですが、現代でも幼いアイドルは人気があります。

多くの人はこれを文化だと感じていないかも知れません。

しかし、三国楽・高麗楽として中国や日本にも伝えられる程、古くから舞踊が盛んな隣国である韓国では、現在もダンスが人気です。

K-POPを聴いてみると、その殆どがダンスミュージックだという事に気が付きます。

韓国の伝統音楽は特徴的な三拍子を用いるのですが、なるほど、文化的な価値観が今も根付いているのだと感じさせられます。

伝統文化について

この様に考えていくと、伝統文化と現代の"カルチャー"の相違とはなんなのか、良く解らなくなって来ます。

"伝統"文化とは何なのだろう。

日本固有の文化が"伝統"なのだろうか?

しかし、琵琶や箏、尺八の様な伝統楽器や茶、書等の文化に至るまで良く考えれば、全て中国からの輸入品なのです。

どの様な変化は良くて、どの様な変化は駄目なのか、私には良く解りません。

しかし、伝統音楽や伝統舞踊を継承する中で、私は型を守りたいと考えています。
学術的な方面からも、型を研究して行きたいです。

その一方で、最も大切なのは、型の中に宿る精神だと感じています。
信念を持って生きる為の芸道であると、私は今でもそう感じています。