年末に仏教音楽に関するスクーリングを受講したので、ここで雅楽を中心とする日本の古典音楽の音楽理論について纏めようと思います。
今回学んだ音楽は複数あるのですが、主に声明を学びました。
声明の楽理は雅楽の物と同じで、音律や音階は雅楽と同じ用語を使います。
雅楽は奈良時代には既に仏教の法会で演奏されており、両者の深い結び付きから、仏教音楽には雅楽(外来音楽)の音楽理論が豊富に取り込まれています。
中国と日本の十二律
中国の音階は三分損益法と言う手法で定められた物です。
まず始めに基準の笛の長さを決め、基準よりも1/3短い笛で吹く(損)と基準にした音と調和する音が出ます。
更に、そこから1/3長い笛で吹く(益)と、更に調和した音が鳴ります。
このような行程を経て作られる音階を三分損益法と呼び、日本の音階も中国の三分損益法に多大な影響を受けています。
参考までに、古代中国の十二律と日本の十二律の関係は以下の様な物です。
中国古代の律名
黄鐘 大呂 太簇 夾鐘 沽洗 仲呂 蕤賓 林鐘 夷則 南呂 無射 應鐘
日本所用の律名
壹越 断金 平調 勝絶 下無 双調 鳬鐘 黄鐘 鸞鏡 盤渉 神仙 上無
十二律と音階の関係
中国音楽を貴重とする日本の雅楽では、平調、断金、一越、上無、神仙、盤渉、鸞鏡、黄鐘、鳧鐘、双調、下無、勝絶からなる十二律と、宮、商、角、微、羽の五つからなる五音を用います。
この宮商角微羽の五音は調子によって定められた基調となる音を中心に移動する音階です。
この為、五音は定められた音程がある訳では無く、調子によってピッチ(音高)が変化します。
解りにくいのですが、十二律とは音律の事で、宮商角微羽の五音は音名の代わりとして用いられている音の名称です。
宮商角微羽の五音は特定の音を表している訳ではなく、律によって変化する音と音の関係を表す概念という事になります。
調子と音階の関係
音階の他に調子という概念があり、雅楽を中心とする古典音楽では双調(呂)、黄鐘調(中曲)、盤渉調(律)、一越調(呂)、平調(律)の五調子を用います。
十二律と調子には同じ名前を用いている物がありますが、例えば十二律の平調は調子の平調とは異なる物です。
十二律は音の高さを、調子は楽曲に用いる音の構成を表しています。
更に余談ですが、調子の中でも平調の様に語尾に調が付く物は平調調等となり表記が良く解らない事になりますから、二つ目の調が略されています。
十二律と五音の関係は以下の様になります。
真言宗における十二律と五音の関係
十二律
(日本名)
平調 羽 宮 羽(角) 微(商) 宮
断金
一越 宮 羽(角) 宮
上無 微(商) 羽
神仙
盤渉 羽(角) 微(商) 宮 羽 微
鸞鏡 羽
黄鐘 微(商) 宮 微 微(角)
鳧鐘 羽
双調 宮
下無 羽 微 角 商
勝絶
平調 羽 微 角 商 宮
断金
一越 微 角 宮
上無 商 羽(角)
神仙
盤渉 角 商 宮 羽(角) 微(商)
鸞鏡
黄鐘 商 宮 微(商) 角
鳧鐘 羽(角)
双調 宮
下無 羽(角) 微(商) 角 商
勝絶
平調 羽(角) 商(微) 角 商 宮
断金
一越 商 宮
調子 呂 中曲 律 呂 律