【修験道と道教】吉野の霊薬・陀羅尼助
奈良の薬と言えば「陀羅尼助」。
ご存じでしょうか、この霊薬と呼ばれる胃薬を。
最近県立図書館で薬の展示をやっていて、面白いな~と思って見ていたら、案の定、陀羅尼助があって、ちょっと笑えました 笑
笑えましたが、展示内容を見ていたら、色々と知らない事も多くて勉強にもなりました。
陀羅尼助、我が家では信仰が深くて、二ヶ月に一度は必ず行者さんの元で加持祈祷を上げていた曾祖父が信頼していた薬の一つで、親子四代に渡って陀羅尼助を常備しています。
県立図書館の説明によると、この陀羅尼助はオウバクと呼ばれる、キハダの木の皮の内側にある黄色い部分を原料にしているそうです。
黄檗宗の黄檗か!と思ったんですけど、全然関係ない同音異義語でちょっとガッカリ。
吉野朝と売薬
奈良県で薬が作られる様になったのは随分前みたいですが、薬の販売が始められたのは吉野朝時代という事らしいです。
吉野朝って、南北朝の事ですよね?
わざわざ吉野朝なんて呼称する所に奈良のプライドを感じますけど、それは兎も角として、南北朝に薬の販売が始まったというのは興味深いです。
私は昔の漫画が好きで、時々読むんですけど、その昔、木原敏江さんが吉野に名産が多いのは南朝を支えるための資金を調達しようとしたからでは無いだろうかとあとがきか何かでおっしゃっていた事があります。
その時はフ~ン、そういう考えもあるのね~と思ってましたけど、改めて南北朝に薬の販売が始まったと聞くと、当時の吉野の厳しい環境と民衆の活躍に思い至ったり、至らなかったりします。
まぁ、そんな南朝なんですけど、実はこの薬は宗教との関わりも深いと。
だから霊薬なんですけど、それも興味深い。
ちなみに、霊薬の名にふさわしく、これは良く効く薬です。
霊薬って言っても、単なる胃薬なんですけど、10年以上陀羅尼助を飲んできて、陀羅尼助で腹痛が治らなかった事は一度もないです。
ただの漢方薬なんですけど、不思議と西洋医学の薬よりも良く効きます。
道教・修験道と陀羅尼助
そんな陀羅尼助は修験道の開祖、役小角が調合した霊薬だという言い伝えもあるそうです。
ここで面白いのは、前にも書いたんですけど、修験道と道教に関わりがある事ですね。
道教では、薬の薬効を神聖視して、不老不死の薬効を持つ金丹を宗教家が作り出そうとするような、そんな一面のある宗教なのですが、この部分で、修験道の開祖が霊薬を調合したとする言い伝えは妙に道教と連鎖しています。
これは、修験道が道教を取り込もうとしているのではないかと私は思いますね。
けっこう、山岳信仰自体が大陸系の信仰なのですが、当初から修験道は道教っぽかったのかと言うと、そうでも無くて、時代と共に、より実践的な道教理論を取り込もうとしていた痕跡が見られます。
ただの漢方薬の言い伝えと言ってしまえばそれまでなんですけど、すごく面白いですよね。
道教と修験道の関係というのは、まだまだ十分では無いですが、色々研究されている話題でもあります。
そのなかで、普段から常備している薬が、実は日本と中国の宗教思想が混合した所から出ている可能性があること、これはすごく面白いと思います。
今も生活に根付いている文化ですから、なんか凄いですよね、その影響力が。
あと、陀羅尼助、本当に良く効くのでオススメです。