ブラック企業で働き続けてしまう理由ー心理学の視点から見る雇用問題
こんにちは。
現在無職の通信制大学生です。
この頃心理学を履修して勉強しています。
心理学とは、人の行動や判断を科学的な視点から判断しようとする学問ですが、心理学は社会に当てはめて考える事ができると感じました。
そこで、心理学として学んだ事を実際の社会に当てはめて、身近な問題を科学的な視点から考えてみたいと思います。
学習心理学
私は今、大学で学習心理学を学んでいます。
学習心理学の中で使われる「学習」とは、人間が何かを経験する事で生まれる行動の変化(学習)を意味しています。
学習心理学では、人間はどのような原理・法則の元で学習するのかについて研究しています。
行動をおこす源となる意欲を動機といいます。
学習の動機は多種多様ですが、身近な物では賞罰や効力感・無力感、努力と能力への原因帰属等があります。
セリグマンとマイヤーの実験
セリグマンとマイヤーは次のような実験をしています。
彼らは犬をABCの三つのグループに別け、A,Bグループの犬に電気ショックを与えます。
Aグループの犬には自分で電気ショックを止められる仕掛けを作り、Bグループの犬は自分では電気ショックを止められない仕掛けを作ります。
そして、Cグループの犬には何も経験させませんでした。
更に、二部屋のシャトルボックスを用意して、犬が部屋を移動すれば電気ショックを止められる仕掛けを作り、実験しました。
すると、Aグループの犬はすぐに仕掛けを学び、電気ショックの度に部屋を移動する様になりました。
一度目の実験で何も経験していないCグループの犬も、Aグループと同程度の時間で電気ショックを止める仕掛けを学習しました。
しかし、Bグループの犬はその場にうずくまるだけで、全く仕掛けを学習しませんでした。
自己効力感と学習性無力感
セリグマンとマイヤーの実験で、Bグループの犬はなぜ他の犬と同じように電気ショックの仕掛けを学習しなかったのでしょうか?
なんとなく解ると思うのですが、Bグループの犬は学習しなかった訳では無く、一度目の実験で電気ショックを止める事はできない事を学習してしまったのです。
自ら結果を変えられる事を学んでいるA,Cグループの犬の状態を自己効力感、結果を自分では変えられない事を学んでいるBグループの犬の状態を学習性無力感と言い表します。
学習性無力感の状態にある人は、自ら行動を起こす事を止めてしまいます。
学習性無力感を学んだ時に、私はブラック企業で働き続ける人が会社を辞めない理由はここにあると感じました。
私達は何処で無力感を学習しているのか?
ブラック企業で不当な扱いを受けながら働き続ける人達の心理に学習性無力感が関係しているならば、彼らは社会の何処かで無力感を学習しているという事になります。
一体どこで無力感を学習しているのでしょうか?
ブラック企業から転職してもブラック企業だった、会社に意見や提案を全て却下された。
このような状況が続けば、人は無力感を学習してしまいます。
この様な状況は、実際問題として良くある事ですし、同じ状況でも現状を打破できる人と、現状を打破出来ない人がいます。
この違いは過去の経験から来ています。
例えば、学生の頃から勉強やスポーツ等で結果が出せなかった人や、社会人になってから何年も結果が出せない状態が続いた場合、人は思考を停止して"自分には結果が出せない"事を学習してしまいます。
根本的な問題として
更に根本的な問題として、現代の日本では個人の意見が尊重されないという点が、これらの問題に大きな影響を与えている様に思います。
例えば、欧州の様に従業員がストライキを起こす様な環境があれば、従業員一人一人が会社を変えていく事ができるという認識が自然に芽生えて来ます。
しかし、組織に対して個人が意見する事が認められない環境にある場合、従業員は必然的に自分の意思や意見を抑え込む様になります。
"個人の考え会社に反映されない"事を学ぶ事で、会社に対する疑問や要求は個人の中で"抑え込むべき"物だと理解されてしまうのでは無いでしょうか。
職場がこの様な環境になると、自然と社内の自浄作用が無くなり不正が起こりやすくなります。
ブラック企業に勤めている人は一度立ち止まり、自分の心理的な状態と社内の環境を冷静に判断すべきだと思います。